・むし歯の治療は治癒ではなく置換行為である。・したがって、むし歯を作らないことが最も大切。・止むを得ず歯を削る場合は必要最小限にとどめる。

むし歯

むし歯はどうしてできるのでしょうか?

むし歯はお口の中にいるむし歯の原因となるばい菌が、食べ物の中に含まれる砂糖をえさにして歯をとかす酸を作り出し、歯に穴をあけてしまった状態をいいます。
したがって、むし歯のばい菌を減らし、歯を酸にとけないよう強くし、砂糖の摂取を制限すればむし歯はできにくくなります。
むし歯は特に歯のかみ合わせの溝、あるいは歯と歯が接する部分、歯と歯ぐきの境目などにできやすいといわれています。
これはなぜかというと、これらの部位には汚れがたまりやすいので、ばい菌が酸を持続的につくりだしやすいからです。
むし歯
むし歯

さて、そのようにしてできてしまったむし歯はどのように治療されるのでしょうか?
きわめて初期のむし歯でしたら、再石灰化を促進することによってむし歯の進行を停止することができます(図1)。
 
でも、穴のあいてしまったむし歯は自然治癒することはできません。
したがって、むし歯のばい菌に感染した歯を除去して他のものに置き換えます(図2)。
 
その範囲が比較的小さい場合にはレジンとよばれる白いつめもので修復することができます(図3)が、比較的大きくなると各種金属や白い材料等で修復することが必要になってくる場合もあります(図4)。
 
これは、切り傷が治るのとは異なり、もとあった状態に戻っているわけではありません。
機能的、形態的に回復させることはできますが、組織学的には治癒しているとは言い難い状態です。
さらに、歯を削れば削るほど歯の寿命は短くなることが経験的に知られています。
したがって、我々は

むし歯に対する考え
以上の3つを肝に銘じてむし歯に対する治療を行っています。

むし歯の段階と治療法

むし歯の段階と治療法

1. ほんの初期のむし歯です。適切に管理をすれば進行を止めることができます

状態

歯の一番外側のエナメル質が溶けた(脱灰)状態。
(痛みなどの自覚症状はありません。歯の表面にツヤがなく、ときに薄い茶褐色になる。)

治療法

予防処置

方法

  • フッ化物塗布・MIペーストなどを応用して、再石灰化の促進
  • ブラッシング指導
  • PMTC
むし歯の段階と治療法

2. 中ぐらいに進行したむし歯です。冷たいものにしみるようになってくることがあります。

状態

むし歯が象牙質まで達し、穴があいている状態。 (冷たいもの、熱いもの、甘いもの、すっぱいものなどによって痛みを感じます。茶褐色や黒っぽくなっています。)

治療法

詰め物

方法

  • 保険・・・・・・・銀歯
    ・・・・・・・コンポジットレジン(白い)
  • 保険外・・・・・セラミックス 金歯
    ・・・・・ハイブリッドセラミックス
むし歯の段階と治療法

3. 神経の近くまで進行したむし歯です。なにもしなくてもズキズキと痛むことがあります。

状態

歯髄(神経)まで侵され、大きな穴があいた状態。
(ズキズキと刺すような、特有の痛みがある。)

治療法

神経の処置後、かぶせ物

方法

  • 保険・・・・・・銀歯
    ・・・・・・硬質レジンジャケットクラウン(前歯~小臼歯)
    ・・・・・・硬質レジン前装クラウン(前歯のみ)
  • 保険外・・・・メタルボンド
    ・・・・ハイブリッドセラミックス
    ・・・・オールセラミックス
むし歯の段階と治療法

4. 頭の部分はとけて無くなり、歯ぐきの中に根しか残っていません。

状態

歯肉から上の部分(歯冠 )はほとんどなくなり、根(歯根)だけが残された状態。(状態により、歯根の保存は可能ですが放置すると抜歯になります。)

治療法

抜歯(歯根が保存できる場合は状況によって対処します。)

【注意】

3,4の段階になると,歯根の先の炎症を起こした部分に膿がたまり、歯ぐきから膿がでてくることもあります。
ときには、この膿の中の細菌や毒素が、血液などに感染し、血管を通って全身に運ばれ、心臓病、皮膚病などの病気を引き起こします。
たかがむし歯1本と侮ってはいけません。

詰め物・被せ物の種類

被せものの種類
保険/自費
歯の種類
冠の種類
審美性
機能性
耐久性
金属成分
保険診療
奥歯
金属冠(金銀パラジウム合金)
×
☆☆
硬質レジンジャケット(小臼歯のみ)
使用に耐えうる
×
前歯
硬質レジン前装冠
使用に耐えうる
硬質レジンジャケット冠(あまり使用されません)
使用に耐えうる
×
自費診療
歯の種類によらず
使用できます
ゴールド冠
×
☆☆
☆☆☆
メタルボンドクラウン
☆☆
☆☆
☆☆

オールセラミックスクラウン
☆☆☆
☆☆
☆☆
ハイブリットジャケットクラウン

☆☆☆=最も優れている  ☆☆=優れている  ☆=普通   =使用に耐えうる  ×=あまり推奨されない
(nico 2009.4 クインテッセンス出版より改編)

むし歯予防”に対する当院の考え方

むし歯予防

皆さんの中には「歯を毎日しっかりみがいているけどそれでもむし歯になってしまう。」とおっしゃる方もいるでしょう。実は、むし歯の原因菌は歯に固くくっつくので歯ブラシだけで汚れを落とすのは非常に困難なのです。

たとえば、むし歯のできやすい部位に歯と歯が接する部分があります。
この部位は歯ブラシでは物理的に届かない場所でもあります。
そんなときに使用するのが「デンタルフロス」です。
フロスの使用によって歯ブラシでは届かない汚れを掻き出すことができます。

また、むし歯に対してとても高い予防効果を発揮するのがフッ化物です。
フッ化物は歯に取り込まれることで歯質を強化し、酸に対する抵抗性を 強くしてくれます。
現在、市販されている歯みがき粉の9割程度には フッ化物が含有されています。
また、定期的にフッ化物を塗ること、うがい薬として用いることも可能です。
特に、歯が生え始めの2~3年は歯が柔らかいので、フッ化物の利用は 大変効果的です。

しかしながら、自分で行う手入れ(ケア)には限界があります。
ご自身ではどうしても取り切れないような汚れを専門的な器機を使って落とすのがPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)です。

PMTCには、むし歯予防や歯周病の予防や改善、歯質の強化とともに、歯の着色を除去し光沢のあるきれいな歯を保つ、などの効果があります。
したがって当院では、

  • ブラッシング・PMTC等によってばい菌を減少させる
  • フッ化物の利用によって歯を強化する
  • 砂糖の摂取制限

以上の3つをむし歯予防の柱として考えています。

むし歯予防はフッ化物!上手に使って賢く予防 3歳までの「感染の窓」をいかに乗り切るか!むし歯予防に大変心強い味方=フッ化物(フッ素)
一生涯に渡って健康な歯とお口を維持する始まりがこの時期です。次のハードルは、3歳までの「感染の窓」をいかに乗り切るかというところになります。「三つ子の魂百まで」と言いますが、まさにむし歯予防に関しては極めて的確に言い表した言葉だと思われます。
 
さて、むし歯予防には大変心強い味方があります。それがフッ化物(フッ素)です。

さあ、歯が生えてきた!

赤ちゃん

お腹のなかの赤ちゃんにむし歯予防ができることはご理解いただけたと思います。次は、生えてきた歯に対するむし歯の予防法をご説明しましょう。はじめに、むし歯とはどのようなものなのでしょうか?むし歯とは、むし歯菌が糖分を栄養としてプラーク(歯垢)と酸を作り、歯が溶かされて穴があく病気のことです。したがって、むし歯菌を減らし、糖分の摂取を控え、歯が溶けないよう硬くすることで、むし歯リスクを減らすことができます。むし歯菌を減らすには、歯みがき、キシリトールが有効です。糖分の摂取は、規則正しい食生活、ダラダラ食いをしないことが肝心です。
 
では、歯が溶けないように硬くするには?   フッ化物(フッ素)がとても効果的なのです。

フッ化物の応用法

フッ化物塗布法

大きく分けるとフッ化物の応用法には、全身的応用法と局所的応用法とがあります。全身的応用法とは、水道水にフッ化物を添加したり、フッ化物の錠剤を服用する方法で、国内では原則的に行われていません。我が国では局所的応用法が主流です。これには大きく分けて3つの方法があります。1つ目は、フッ化物塗布法です。歯科医院で行われるプロフェッショナルケアのひとつで、比較的高濃度のフッ化物を直接歯に塗る方法です。歯は生えてから2~3年ぐらいの間、大変柔らかくむし歯菌によって溶けやすいので、歯の表面のエナメル質をフッ化物によって改善し、硬くするという目的があります。ある程度の本数がはえそろった1歳半頃から行い、塗布する間隔は個人のカリエスリスクを判定して決めますが、だいたい3~4ヶ月毎が多いようです。

フッ化物添加歯みがき剤

2つ目の方法として、フッ化物添加歯みがき剤を使用することがよく知られています。現在国内で流通している歯みがき剤の約9割には、フッ化物が何らかのかたちで添加されています。皆さんがお使いになっている歯みがき剤の裏面をご覧ください。成分表示の薬用成分の欄に、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第1スズのいずれかが書いてあります。若干の作用方法は異なりますが、歯の表面構造を改善することに違いはありません。ただし、その効果的な使用方法はあまり知られていませんので、ご紹介しましょう。1.ペーストを歯ブラシに多めに出します。2.2分間以上みがきます。3.うがいはできれば1回、少なめに行います。4.歯みがき後の最低30分間は飲食禁止。とくに、うがいを少なくすることによって、フッ化物の有効成分をお口の中に長くとどめておくという効果があります。ぜひ、正しい使い方を実行してみてください。

フッ化物洗口法

3つ目の方法が、フッ化物の応用法の中で最もむし歯予防効果の高いといわれている洗口法です。週1回法と毎日法があり、使用するフッ化物の濃度が異なります。週1回法は学校等の集団で行われることが多く、家庭で行うのは毎日法です。1日1回、225~250ppmの低濃度洗口液を用いて30秒間ぶくぶくうがいをします。通常、夜寝る前に歯みがきした後に行うことが多いようです。基本的には、永久歯に対する予防法なので、4歳ぐらいから永久歯列が完成する15歳ぐらいまで行うことが理想的です。

理想的なむし歯予防法は?

歯ブラシ

では、理想的なむし歯予防法はどのようにすればよいのでしょうか?生後6ヶ月前後から歯が生えてきます。歯が生えてきたら、歯ブラシを使って歯をみがく練習をしてみましょう。本数が少ないときは、ガーゼなどで汚れをぬぐうことも有効です。慣れてきたら、低濃度のフッ化物が含まれている歯みがき補助剤(レノビーゴ等)を使い始めるとよいでしょう。1歳6ヶ月頃になれば、乳歯が16本程度そろってきます。歯科医院でフッ化物塗布を始めましょう。4歳になってぶくぶくうがいができるようになったら、フッ化物洗口を開始します。家庭では、フッ化物洗口とフッ化物添加歯みがき剤。歯科医院では、フッ化物塗布と定期健診。このような組み合わせで、むし歯のリスクを減らしていきます。中学校卒業まで、フッ化物洗口を継続できれば理想的です。高校生になると、食生活が乱れがちになり、最後に生えてきた第2大臼歯があっという間にむし歯になることがあります。フッ化物は、むし歯予防にとって大変重要な因子ですが、基本的な生活習慣を正しく確立することこそ、一生むし歯を作らずに過ごせる秘訣です。